http://www.asahi.com/articles/ASGD44G0YGD4UTQP010.html
「こっちにおいでよ」。仲間が声をかけても、5歳のリョウイチ君の動きは止まらない。野球遊びの試合前、みんなが本塁付近に並んであいさつしたが、1人だけ列を離れて駆け回っていた。しばらくすると急に座り込み、整列した仲間に向かって大声で声援を送り始めた。
「発達障害」。3歳の頃、医師に診断された。集中力が続かず、じっとしているのが苦手。衝動的に行動してしまいがちなのが特徴といわれる。
リョウイチ君の父は、同じ年頃の仲間とサッカーを楽しんでもらいたかった。地元にサッカー教室はあったが、「普通のお子さんたちが通うチームでは、あの子は浮いてしまう。ほかの人にも迷惑がかかる。そう思うと、親としては気が引けました」。同じ症状の子どもたち専門のサッカー教室を見つけたが、神奈川県だった。船橋市内の自宅から2時間以上もかかるため、あきらめた。今は、毎週末、スマイルクラブに通うのがリョウイチ君の楽しみだ。
「おい! いま、足を引っかけただろ」。試合では、よく相手選手とトラブルになり、殴りかかることも。「良くないと分かっているけど、すぐにキレちゃう……。後から、すごい嫌な気持ちになるんだ」
ベンチに下がると、コーチでもある父が駆け寄って必ず声をかける。常にタカシ君のそばを離れず、見守ってきた。「こういう子だからこそ、ルールのあるスポーツをやらせたかった。社会の規則を学ばせたいのです」